東大院生ショータのなるほどアウトプット~バイオ研究者への道~

生物学系研究者を目指す大学院生のブログ。学びや気付きのアウトプットをしていきます。

「わけわからないけど面白い」研究をするために

ラボでお世話になっている研究員の方のご紹介でとある研究会の合宿に参加することができました。といっても先生方のディスカッションを聞いているだけでしたが、それでも非常に刺激を受け有意義な時間でした。そこでの気づきを簡単にシェアしたいと思います。

 

実験屋さんと数理屋さんのコラボレーションは大変

生命現象を数学的、物理学的に理解するためには数学者物理学者の力を借りる必要があります。しかし実際に実験をして生物や細胞を扱っている生物学者が観察される生命現象を数理研究者にきちんと伝えイメージを共有するのは非常に大変で腰を据えた努力が必要になります。研究会では実験系の先生がデータを示すとともに仮説やシミュレーションと合わない点、解釈に行き詰まっている点を説明した後、2時間ほどたっぷり時間をとって数理系の研究者が「ここはどうなっているのか?」など根掘り葉掘り質問しだんだんと全体の共有イメージが醸成されていくという感じでした。バックグラウンドが異なる実験系と理論系がコラボレーションするにはイメージの共有というのが一つの大きな壁で、それを乗り越えるにはお互い腰を据えてとことんコミュニケーションするしかないというのを実感できた経験でした。

 

教科書は役に立たない!?

僕が興味のある「生物の形づくり」の分野はこれまでの分子生物学や細胞生物学では全く説明できない現象がたくさんあります。その理由としては、形づくりのメカニズムを考えるには遺伝子や分子だけでは不十分で細胞外に分泌されるキチン繊維などのポリマーや細胞にかかる力の変化など材料化学動力学なども統合して考えなければならないということが挙げられると思います。既存の生物学の教科書をいくら集めてきても何の役にも立たない領域が生物学にはまだまだ残されているのです。

 

研究テーマはわけわからないくらいでいい

研究会では実験から数理まで各分野で日本を代表する研究者が集まって一つの現象についてウンウン唸りながら何時間も議論していましたが、それで何か結論にたどり着くわけでもなく、みんなわけがわからないという感じでした。でもそれくらいわけのわからないこと、何がわかるのかもわからない様なことをテーマに研究していいんだなと感じました。普通、研究はうまくいって成果が出て論文になったようなものしか聞く機会がないので、研究の最初からストーリーがあるのが当然の様な錯覚を覚えます。でもそんなはずはなくて、困難なテーマほど研究のスタート段階では道筋もゴールも見えていないわけで、そこを勇気根気で取り組み続けられる研究者が大きなことを発見できるのでしょう。逆に、最初からストーリーが描ける研究は面白みに欠けると感じられる感性も大事です。

 

 

 

自分が一番関心ある領域の先生方がとことん議論して、わけがわからないけど面白い研究に何とか道筋をつけていこうとする現場に居合わせることができたのは本当に貴重な機会でした。ECMやメカノバイオロジーなどもっと勉強したいキーワードもゲットでき刺激になりました。今年の4月から研究を始めたばかりのど素人ですが「わけわからんけど面白い」ことを研究ができるように勉強していきたいです。