8月のイベント第三弾ということで生化若手の会主宰の第60回生命科学夏の学校のレビューです。こちらも完全オンライン開催となりました。
学術系クラウドファンディングとは?
今回のシンポジウムのテーマは「クラウドファンディング」。科研費に代表される競争的資金と異なり、一般市民から研究費の支援を募るクラウドファンディングが広まりつつあります。シンポジウムではその実情や実際に研究費を獲得した方のお話を聞き、その後参加者でグループにわかれディスカッションしながらクラウドファンディング案を立案してもらうという企画です。
実際にクラウドファンディングで研究費を集めた方のお話を聞ける機会はかなり貴重だったと思います。申請書を書く苦労はありませんがその分広報活動に奔走する必要があり決して楽ではないこと、大学院生でもチャレンジ可能だが前例がない場合が多いためやりやすさは所属する組織に依存すること、応用的な研究だけでなく基礎的な研究もおもしろさがアピールできれば資金を得られることが印象的でした。
一般的な競争的資金も税金なので、国民から支援していただいているわけですが顔がみえるわけではありません。それに対してクラファンでは支援者ひとりひとりと直接関わることができる「顔が見える」研究費であるという点も大きな特徴です。業績稼ぎにあくせくしがちな研究生活ですが、「この人を喜ばせるために研究したい」と思えるのは素晴らしいモチベーションになるなと思いました。
学術系クラウドファンディングが気になったからは代表的な学術クラファンプラットフォームであるアカデミストさんのHPを見てみると現在募集中の色々なクラファンをみることができますよ!
<参考文献>
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/72237/1/JJSC24_5_ikkatai.pdf
冬眠研究の最前線
その他の面白かったお話としては、ハムスターを使って冬眠を実現する体の仕組みを研究されている山口先生のお話が印象的でした。哺乳類の一部は冬眠するというのは子供でも知っているような話ですが、それを実現する分子機構となるとほとんどわかっていないとのこと。最近では本来冬眠しないマウスで冬眠を誘導できたとの論文が発表され話題になったのは記憶に新しいところですね。低温化でなぜ長期間生存できるのか?ヒトも冬眠できるのか?これからの冬眠研究の展開は目が離せません。
<参考文献>
http://www.lowtem.hokudai.ac.jp/hibernation/styled/
オンラインでも得られたつながり
参加者同士の交流も、Remoというサービスを使ってかなり濃密に行うことができました。Remoは円卓がたくさん並んだバーチャル会場で、同じ円卓にいる人とだけビデオ通話ができるというサービスです。画面共有やホワイトボードといった機能も充実していて、グループディスカッションでは大活躍しました!交流会では他の卓に誰がいるか様子を見ながら自由に卓を移動できるというのが実際に近くて面白かったです。普段なかなか関わることのできない他大学の学生たちと生命科学を肴にお酒を飲みながら世を明かすという夏の学校の醍醐味(こっちがメイン?)をオンラインでかなり再現できたのではないかと思います。
あなたも夏学に行こう!
次回の生命科学夏の学校は愛媛での開催を予定していますが、現地でリアルイベントとして開催できるかは今後の状況次第となります。生命科学に関わる様々な研究分野の方と交流でき、毎年豪華な講師の先生方のお話が聞けるのが生命科学夏の学校(通称夏学)です。院生が多いですが学部生から参加している人も増えていて頼もしい限り。生命科学を学ぶ全ての人におすすめしたいイベントです!
来年は今年オンラインで知り合った人とまた夏学でリアルで会えたらいいなぁ!