ちょっと記事にするのが遅くなりましたが、2017年5月13日、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科のオープンキャンパスに参加しました。
奈良先端大ってどんなところ?
奈良先端科学技術大学院大学は学部を持たない国立の大学院大学です。つまり、大学の一般的な構成は学部+大学院となっていますが奈良先端大は大学院のみで構成されています。そのため、学生はみんな他大学の学部出身者で、大学院進学の際に奈良先端大を受験して入学します。
情報科学研究科、バイオサイエンス研究科、物質創成科学研究科からなり、これからの科学で最も重要となる情報、バイオ、物質を中心に研究しています。来年度(平成30年度)からは異分野融合を加速するため、3研究科をひとつにまとめた1研究科体制に生まれ変わります。
明確な目標と志、強い興味と意欲があれば、過去は問わないというのがアドミッション・ポリシー。どんな大学のどんな学部からでも、あるいはもう一度学び直したいという社会人でも、バックグラウンドは関係なく受け入れるという方針になっています。
他大学から学生に来てもらわないと成り立たないため、学生への支援は手厚い印象があります。一番いいなと思ったのは月約1万円で住める学生寮があること!学生数の6割と戸数も多いです。
奈良先端大に集まるのはどんな学生か
僕はてっきり京大や阪大の秀才たちが奈良先端大に来ているのかと思っていました。しかし、学生さんに話を伺うと幾分事情が違っていました。結構多いのは近畿圏の私大の理系学生が、私大で大学院に進むと学費が高いので、奈良先端大に進学するパターン。他には、公立大からより高いレベルの大学院を求めて奈良先端大に進学するパターンも。
国立大学を目指していたものの大学受験で失敗して私大や公立大になった人は僕の知り合いにも結構います。そういう人にとって奈良先端大は最終学歴を国立大にするチャンスですし、内部進学の受験秀才と戦わなくていいぶん阪大や京大の院を目指すよりやりやすいのではないかと思います。
また、奈良先端大に来る人がみんな博士号取得を目指すような研究ガチ勢ばかりかというと全然そんなことはありません。約9割の人が修士までで就職しますし、博士号まで取った人も約半数は就職するということでした。就職率も100%に近く、就職に強い大学院という印象を受けました。
奈良先端大の研究
教員一人あたりの研究経費は日本トップクラスで、潤沢な資金の元その名の通り最先端の研究がなされています。異分野融合を大切にしていて、その流れは1研究科への再編でますます強まると予想されます。
以下バイオサイエンス研究科の話になります。
バイオサイエンス研究科は植物科学、メディカル生物学、統合システム生物学の3部門で構成されており、植物、動物、微生物を主な材料とした研究が行われています。注意点として、生態学などのフィールドワーク系はありません。そして、なんといってもiPS細胞生誕の地というロマンがあります。
資金の多さと程よく田舎な土地柄のせいか、どこか牧歌的な雰囲気があり、すぐに役立つわけではない基礎的な研究ものびのびとやっている印象を受けました。だからこそ、絶対うまくいくわけないと誰もが思った山中先生のiPS細胞の研究にもお金を出し、その結果iPS細胞がこの奈良先端大で生まれたのでしょう。成果が出るかはわからない、何に役立つかはわからない。そんな研究でもビジョンと意欲があればチャンスを与える。そういった懐の深さが奈良先端大にはあるように感じました。
地方国公立大や私大の理系にとって、大学院での一つのチャレンジとして、奈良先端大への進学という選択肢はなかなか悪くないなと思います。旧帝クラスの大学に行けなくてもトップクラスの研究環境へのチャンスは開けているという事実にとても勇気づけられました。